共通するものと異なる個性

ピアニスト・辻井伸行さんの演奏を、初めて生で聴きました。

「悲しみのモーツァルト」と題したその演奏会は三部構成になっていて、最初の曲は交響曲第25番ト短調K. 183でした。次はピアノ協奏曲第20番ニ短調K. 466で、ここで辻井さんが登場します。最後は交響曲第40番ト短調K. 550でした。

辻井さんの演奏は以前CDで聴いたことがあって、「横山幸雄さん(ピアニスト・辻井さんの大学時代の指導教授)とは違った個性がある」という印象を受けました。あくまでも私個人の主観ですが、横山さんの演奏には「緻密さに裏打ちされた豪快さ」が感じられる一方、辻井さんの演奏には、横山さんの演奏にない「軽妙さ」や「柔らかさ」が感じられたのです。

今回演奏を生で聴いてみて、辻井さんが師とは異なった個性を持つと同時に、師から受け継いだもの、共通するものもあるような気がしました。曲に真剣に向き合う姿勢や、一音一音を丁寧に弾き込もうとする姿勢には、横山さんの演奏に通じるものがあると思います。

「弟子は師匠から『風』を学ぶものだ」と言った人がいましたが、今回辻井さんの演奏を聴いて、横山さんの「風」を学んだ様子がうかがえました。同時に、弟子に共通するものを持たせながらも異なる個性を伸ばした師の力量を、改めて見たような思いがします。

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